アウターシェルの選び方
ベースレイヤー、インサレーションと続いたウェアの選び方シリーズもいよいよ最後のアウターシェル編です。
過去の記事はこちら
アパレルメーカー社員による登山・自転車用のインナー考察 - 葦原計劃
説明することが多くてどうしても長くなるので、先に結論を書いておきます。
・夏は極論何選んでもいい。安くて軽いのが良いと思う
・ポケットの場所/大きさや、フードのサイズ感は重要
・秋から冬、冬から春は保温性のあるモデルを選ぶべき
まず素材の説明から入ります。
防水ウェアの生地メーカーは大きく分けて2つ、Gore-texとPertexになります。
①Gore-tex Shakedry
Gore-texの表地を廃した軽量モデル。異常に軽く、生地の撥水性が落ちない
(普通は表地が汚れると撥水性が落ちるが、このモデルには表地がない)
服の内側から湿気を逃がす通気性が非常に高い。
しかし耐久性に難がある。
②Gore-tex Paclite(2L - 2 Layer)
Gore-texの裏地を廃したモデル。裏地がShakedryみたいなテカテカ生地です。
軽いが若干べたつき感があり、濡れてるとひんやりする。
③Gore-tex Paclite Plus(2.5L - 2.5 Layer)
Gore-tex Pacliteの裏地代わりにラミネートを施したモデル。微妙な凸凹があります。
凸凹によって肌に触れる表面積が減るため、濡れた時のひんやり感が低減される。
④Gore-tex Active(3L ‐ 3 Layer)
一番ベーシックなゴアテックス。
表地・メンブレン・裏地の3層。裏地がトリコット(経編)のモデルがC-knit
一番バランスが取れているモデルです。
⑤Gore-tex Pro(3L ‐ 3 Layer)
全て表地+メンブレン+裏地の3層です。
2020年頃アップデートされ、Proの中にも3モデルあります。
1.Most Rugged
タグのPROの文字が白地に赤で書かれているのがMost Rugged。ひっかきなどへの耐久性が高く、なおかつ皮脂による撥水性の低下が起こりにくいモデルです。
2.Most Breathable
こちらは赤に白抜きの文字です。
少し細い糸を使っていて軽く、湿気を逃がす透湿性も高いモデルです。
③Stretch
追加で上の画像のようなタグが付いています。
若干ストレッチがあります。(本当に若干ですが)
別のGore-tex Proと組み合わせて、ストレッチが必要な箇所のみに使われていることが多いです。
黒地に白でPROと書かれているのは旧Goretex proで、全てMost Ruggedと同じコンセプトの生地です。
これらのGore-tex の何が違うの?
と言うと、生地の厚みと耐久性です。
Gore-tex Activeが一番ベーシックなタイプ。
ShakedryやPacliteはActiveより層が薄くて軽量なタイプ。
ただし耐久性は劣ります。
Gore-tex ProがActiveより耐久性の高いモデル。
ここでいう耐久性とは、外層のひっかきへの耐久性が高く、皮脂が生地に付着しても防水性・通気性が落ちにくいという点を指します。
Pertex Shield
こっちは使ったことがないので正直あまり詳しくないです
①Pertex Shield Pro
PUによるメンブレン層を持つ生地で、ゴアテックスとほとんど同じ構造です。
多分Goretexより細い糸を使っており、生地が薄め。
②Pertex Shield
内側が疎水性、外側が親水性で体から発した水分を生地の外側へ持っていく仕組み。
7Dの糸を使っていて軽い
(Gore-tex は30D~40D。普通のダウンの表地が12Dとかなのでそれ以上に細い糸)
メンブレン層がないので、防水性はGore-tex に劣りますが、湿気を外へ逃がす透湿性はGore-tex より基本的に高いです。(Shakedryには劣る)
Shield無印の方は防水性が低いと認識しているんですが、実際に使ったことがないので何とも言えません。Pertexは生地が薄いので、全体的にGore-tex より耐久性は劣る傾向にあると思います。逆に軽いというメリットもあります。
では実際にアークテリクスの主要防水ウェアのラインアップを見ていきます。
モデル名 | 素材 | 用途 | 値段(税込) | 重量(g) |
Norvan SL | Gore-tex Shakedry | トレラン | 46,200 | 125 |
Norvan LT | Gore-tex(C-knit) | トレラン | 46,200 | 190 |
Zeta SL | Gore-tex Paclite Plus | トレッキング | 44,000 | 310 |
Beta LT | Gore-tex(Active, C-knit) | 登山(3シーズン) | 55,000 | 395 |
Beta FL | Gore-tex Pro(Most Breathable) | 登山(3シーズン) | 70,400 | 360 |
Beta AR | Gore-tex Pro(Most Rugged) | 登山(4シーズン) | 75,900 | 460 |
Alpha SV | Gore-tex Pro(Most Rugged) | クライミング(冬季) | 110,000 | 485 |
一番ベーシックなのはActiveを使用したBeta LT。
それより上はより軽量なモデル、それより下はより耐久性の高いモデルです。
一般的に300g台が普通で、200g以下は軽量モデル、400g以上は重めのモデルに分類されます。
Norvanはトレラン向けのモデルで、ポケットやドローコードなどのパーツが少ない代わりに軽量になっています。シルエットもタイトで、あまり内側に着こむことを想定していません。フードもコンパクトで、ヘルメットの上からフードは被れません。
画像からも脇にポケットがないことがわかると思います。袖のマジックテープもありません。
Zetaより下が山用のオーソドックスなモデル。
ポケットが2個以上になり、フードがヘルメットの上から被れます。
袖を絞れるマジックテープや、裾を絞れるドローコードがついています。
Zeta SL。シルエットが若干タイト。
Betaが一番普通の山用モデル。ZetaはBetaより裾が長め。Alphaはそれよりも裾が長く、お尻が隠れる長さ。
Beta AR。シルエットに若干余裕がある。
また、アークテリクスは最後のアルファ2文字でモデルのコンセプトがわかるようになっています。軽量モデルほど生地が薄くなります。
SL…Super Light…軽量モデル
FL…Fast and light, 軽量で通気性の高いモデル(若干トレラン寄り)
LT…Light, 通常モデル
AR…All Around, 耐久性のあるモデル
SV…Severe Wheather, 最も荒天向きのモデル
AlphaとかBetaといったモデル名はターゲットにしているアクティビティによって使い分けられています。ウェアの丈や、ポケットの数・場所、フードのサイズ、サイズ感などに差があります。
例えばAlphaはクライミング向けで、ナポレオンポケットという、ポケットが腰ではなく胸元についているモデルになります。(クライミング用の装備をつけてもポケットが使えるようにされている)
僕はこのポケット使いづらいので好きではないです。
まあ、表を見ていただくと重量・生地・素材に差があることがわかると思います。
200g以下が一般的に超軽量モデルです。300-400gはベーシック、400g以上は少し重めです。
ベーシックなモデルを300g台で作れるのに、なぜ400g以上のモデルがあるのか?
いやいや、軽量性が重要なら、そもそも300g以下のモデルだけでよいのでは?
こういう疑問が浮かんできた人は賢いです。
まず軽いモデル。
当たり前ですが、使っている生地の量が少ないから軽いです。
シルエット…タイト目。下にダウンなどを着こむことはあまり想定されていない。
ポケット…少ない。
耐久性…比較的低い。
フード…コンパクト
保温性…低い(丈が短い、裏地が省略されていて保温性が低い)
このような特徴があります。
下に着こめないことが多いので、寒い時期には向きません。
次に重いモデル。
シルエット…余裕がある。下にダウンを着こむことを想定。
ポケット…多い。2~4個。
耐久性…高い。頑丈。
フード…下にヘルメットを被れるくらいの余裕。口元も大きく隠せる。
保温性…高い。裏地がついていて保温性が高い。また、丈が長いなど防風性の高いモデルが多い。
300g台のモデルはこの中間ですね。
下に着こむ必要のない夏はタイトなモデルで問題ないと思います。
防寒性もあまり必要ないので薄い生地でよいでしょう。
逆に秋から春にかけては保温性が重要になります。
下に着こめる、シルエットに余裕のあるモデルを選ぶべきです。
特に厳冬期に使用する場合は体を覆える面積が広いものが適しています。
こういった点で、生地・シルエットに差を出して、モデル名を変えているわけです。
個人的にですが、冬にアクティビティをするなら2着持ち、そうでなければ1着持ちでよいと思います。私は冬にBeta FL(Gore-tex Pro)を、夏はPaclite Plusのモデルを使用しています。
今年はPertexも試してみたいと思っているので、夏はそっちを買ってみようと思います。Gore-tex より安いですし。
以上