個人的に、最近は登山ウェアで自転車に乗っています。
登山を再開して機能性インナーを買い、その快適さに魅了されたのです。
今年は結構な種類のインナーを買いましたので、その使い勝手を合わせて機能性インナーの選び方をまとめたいと思います。
*前半は糸の説明になっていますので、実際何を買えば良いのかだけ知りたいだけの方は途中まで飛ばしてください。
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機能性インナーを着る目的は、体温を調整することです。
暑いときは涼しく、寒いときは暖かくします。
メーカーは主に①糸の種類 ②編み方 の二つでその目的を達成しようとします。
①糸の種類
糸の表面積が広い方が水分を発散しやすいです。
なので、基本的に機能系インナーは特殊な加工糸を使用しています。
下の画像は東レのプライムフレックスに使われている糸です。
糸に強い撚りがかかっており、表面積がまっすぐの糸よりも大きいことが見てわかると思います。毛細管現象で肌の水分を素早く吸い上げ、広い表面積で水分の発散を促す仕組みです。夏用のインナーに使用されます。
基本的にポリエステルの糸は、細い糸が数本が撚りあわされた”マルチフィラメント”というものです。一本の太い糸を使用しているものはモノフィラメントと呼びます。この写真の糸に写っているのはマルチフィラメント一本の断面図です。
作り方ですが、ポリエステルの糸は熱可塑性があるので、一方向に仮撚りし、ガラス転移点を超える温度をかけてから撚りを解きます。すると、仮撚りされた時の捻じれが残ったままの糸になるわけです。DTY(Draw Textured Yarn)と呼ばれる糸です。
逆に冬は糸自体が多くの空気をはらむことが断熱効果を生みます。
下の画像は東レのAIRLYSUMLON +C™という糸です。
中空糸が空気をはらみ、また糸自体がふんわりしていることで編んだ生地で糸同士の隙間も開きやすくなっています。この空気層が体温の熱を外へ逃がさない役割を果たします。
ポリエステルの糸は細い口金から一気に射出して作られるのですが、その口金を加工することでこういった糸を作ることができます。
他にもポリプロピレンやウールを使用したインナーもあります。
ポリプロピレンは公定水分率が0%の、全く水を吸わない繊維です。
なので生地の内側に使うことで肌へのべたつきが減らせます。
ポリエステルが0.4%なので正直大差ないですが……
そしてポリプロピレンは溶融温度が低いため普通に染色することができず、製糸する時点でしか色を付けることができません。なのでほとんどの製品が黒です。
(公定水分率については下記)
https://www.ttsmile.co.jp/glossary/category/technique/other/koutei.html より
逆にウールは公定水分率が高い=水分を吸いやすいです。
身体から出てくる水蒸気が生地に吸収されると、水蒸気内で自由運動していた水分子の運動エネルギーが熱エネルギーに変換されます。なので、ウールは暖かいのです。
また、ウールは髪の毛のようなキューティクルを持っているのですが、これが乾いているときは開き(画像右側)、濡れているときは閉じます(画像左側)。
キューティクルが閉じているときは水分を吸わなくなり、生地のべたつきが減ります。
糸の表面積も減るので、生地が空気をはらみにくくなります。
運動強度が上がる→体から水蒸気が出る→ウールのキューティクルが閉じる→=涼しくなる という仕組みです。
ウールは弱く撚るとふわっとした生地になり暖かく、強く撚るとペタッとした生地になり夏向けの生地になります。ふわっとした生地は冬向け、ペタッとした生地は夏向けです。
スーツにウールが使われているのは上記の通り、吸湿性・速乾性が優れているためです。ウールが水洗いできない理由は割愛します。
②編み方
丸編みか経編の生地です。織りの生地使ってるのは見たことありません。
一番シンプルなのは経編みのトリコット。機械の制限であまり特殊な組織は編めませんが、柔らかい生地を作ることができます。
メッシュやサーマルのような表面に変化のある生地は丸編み、経編み(ラッセル)で作られます。表側と裏側の編み方が異なるダブルの生地も編めます。
速乾系に多いのはメッシュ。空気を通しやすいですが、生地によっては肌が透けます。
速乾系で値段が高いのは、ダブルの生地で内側から吸い上げた水分を外側で発散する仕組みになっているものがあります↓
機能糸に撥水加工・親水加工をかけてるので高いです。
これはTNFのAdvanced Mountain Kit という商品ですが、定価3万円します。
サーマルは表面と裏面の編み方を変えており、下の写真はPOLARTECのPower Gridですが、肌面は空気層を作るよう立体的に、外側は空気を通さないように密度の高い編み方になっています。
糸は大体のメーカーは既存品を使うので複数のメーカーが同じものを使っていたりします。糸(特に化学繊維)を作るのには膨大なロットが必要なので、独自で作れるアパレルメーカーはユニクロくらいなものだと思います。
まあ撚糸加工程度ならそんなにロット要りませんが。
なので各メーカーが力を入れるのは②の編み方になります。
ここは各社バリエーションがあるので実際の商品紹介で触れていきます。
商品紹介
お待たせしました。最初に大まかに分類すると下記のようになります。
・フリース
フリースのベースレイヤーはほとんどないですが、今季見てる中で良さそうなのは帝人のOctaという糸を使ったものです。
TNFはFuture Fleeceという名前で商標とってますが、説明を読む限りOcta使って編み方だけ変えてるっぽいです。今季見てる感じ、カリマーのサーマルクルーがお値段抑え目でよい感じです。
こんな感じの生地です。
・サーマル
POLORTECのPower Grid、Patagoniaのサーマルウェイトが二強です(個人の感想)。
Power Grid は各社が使っており、タグにもその表記があるので、シルエットで選べばよいと思います。
Patagonia :キャプリーン サーマルウェイト
Patagoniaのインナーは袖が長く、個人的には好みです。
街でも着られるので普段着にも良いですね。
結構暖かいので、春や秋にアクティビティに使うと少し暑かったりします。
運動強度が低いときや、真冬に使うのがおすすめです。
・保温+速乾系
サーマルよりも運動強度が高い場合に使用します。
一番使い勝手は良いと思います。
Patagonia:キャプリーン ミドルウェイト
これまで使ったウェアの中では一番おススメです。
中空糸を使用しており、肌面の生地に凹凸があることで保温性があります。
その一方で生地が一定の空気を通すため、蒸れにくいです。
TNF:Flashdry ジップアップ
私は今季買いました。
肌面にポリプロピレンが使用されており、べたつき感が低減されています。
丈が短めで、袖も細めなので、場合によっては大き目のサイズを選んだ方が良いかと思います。
こんな感じの生地です。標高の高い秋山で使うくらいでちょうどよかったです。
真夏は標高高くても少し暑く感じました。
モンベル:ジオライン ミドルウェイト
安いですが生地がそこまでグリッド状になっておらず、あまり暖かさは感じません。
モンベルは価格が安いですから、ウールを使用したジオラインミドルウェイトの方が良いかと思います。私は使ったことありませんが。(ウールは耐久性に難があるので)
・速乾系
今期はPatagonia のキャプリーンを3着買いましたが、その良さに魅了されました。
高いけどやっぱりPatagoniaのインナーは良いです。
Patagonia :キャプリーン ライトウェイト
汗の乾き具合、生地の透けなさ、UVカット機能、生地のストレッチなど、どれをとってもベストです。日焼け防止のために長袖の方がおススメです。
Raphaの一番涼しいジャージも持っていますが、こっちは少し肌が透けます。
あと生地が若干固めです。
・メッシュ
これはミレーのドライナミックと、Mont-Bellのジオラインメッシュの2強です。
ミレー:ドライナミック
これ単体で着てる人は変質者です。日焼けヤバそうだし。
こちらは汗を早く発散させるというよりは、汗による冷えを防止する方向に重きを置いています。薄手の生地ほど涼しくはないです。
糸もポリプロピレンを使用しています。この上に吸水性の高い生地を着ることで、より汗を外側へ発散されやすくなります。
Mont-Bell:ジオラインメッシュ
これはかなり涼しいです。が、肌は透けます。
夏に自転車に乗るとき、私はこれの長袖一枚で済ませたりします。
多分コンビニの店員に乳首見られてます。
・まとめ
私の中では下記チョイスがベストだと考えています。
冬:メリノウール系か、Power Grid
春。秋:キャプリーンミドルウェイト
夏:キャプリーンライトウェイト、もしくはジオラインメッシュ
金があって運動強度低めならウール系がバランス取れててよいと思います。
今回、Amazon のリンクを貼って広告費を稼ごうと思ってましたが、Patagonia の商品がAmazon になかったせいで当てが外れました。尚、この記事は書くのに4時間近くかかっています。
以上