小説(タイトル未定)4.5話 バイト選び 1,600字

自転車は金がかかる趣味である。

そんなことは最初から薄々気付いていた。

 

しかし、いざ自転車と装備を買ってみると銀行口座はあっという間に空である。

バイト探しは喫緊の課題であった。

 

偉大なる先輩方に訊いてみると、大学にはいくつか特殊なアルバイトがあるようであった。

 

 

 

講義ノート

講義ノートというものがある。

そりゃあ講義に出る以上ノートくらい書くだろう、と思っていたらどうやら違うようで、これは講義ごとに1人執筆者がいて、講義の内容をまとめたノートが大学の近くの書店で売られているのだ。これを一冊執筆すれば10,000円がもらえるとのことである。授業に出てお金がもらえるとはなんとお得なアルバイトであることか。

 

のちにこれは誤りだったと気づくことになる。90分の講義の中で、80分クソつまらない雑談をして、10分だけまともに講義をする教授に当たった時は、眠気をこらえるので精いっぱいだった。二回生になってから一度だけ講義ノートをアルバイトで書いたが、A-E評価のうち、C評価だった。執筆者がこれなら、講義ノートを買って試験に臨んだ人はひどい目に遭ったに違いない。

 

・学食

料理を盛り付けて渡したり、調理をしたり、食器を洗ったりする仕事である。

低賃金だが、残った食料を(こっそりと)持ち帰れるというメリットがある。なので、閉まる時間が近づくと、おもむろに持って帰りたい総菜(鶏南蛮など)を調理しだす姿が見られた。

食器洗いが一番ハードで、ベルトコンベアで流れてくる食器をさばいて洗うのだが、食堂が閉まる時間ギリギリに大量の食器が流れてくるので、一番最後まで帰れないのだ。

そして、低賃金である。

 

・赤ジャン

大学には複数のパソコン教室がある。授業で使われることもあれば、解放され、パソコンを持っていない生徒がレポートを書くのに使われたりする。

その際に、パソコンでエラーが出たときに対応したり、椅子を仕舞ったり、プリンタの用紙を補充したりする仕事が赤ジャンである。赤いジャケットを着て仕事をすることがその由来である。

3時間単位でシフトに入るのだが、上に挙げた仕事は正直15分もかからない。自分のパソコンの画面が見えないように座り、ネットサーフィンに勤しむ仕事と言っても過言ではない。期末前は仕事中にレポートを書くことも稀ではなかった。

給料はそこそこよかった。3時間座って遊んでいるだけで金がもらえるのだから大したものである。また、土曜日と日曜日は割増給料が支払われ、特に日曜日はすさまじい給料がもらえたのである。しかし、競争率が高く、なぜかいつも中国人留学生が日曜のシフトに入っていた。

 

・TA(Teaching Assistant)

講義でレジュメを配ったり、回収したりする仕事である。

これはその教授のゼミに入っている人がしていることが多く、3回生~院生がする仕事である。正直何もしていないが、1回90分しかないので時給がよくてももらえる金はたかが知れている。

 

・京都競輪場

サークルの伝手で紹介してもらえる仕事。

落車などの事故が起きたときに搬送する仕事である。

待機時間が長く、自転車のレースも見れるのでいい仕事。

 

京阪バス

関空までのリムジンバスに乗る乗客の荷物をバスに積み込む仕事。

京都駅や、松井山手のバス停に待機し、バスが来たタイミングだけ仕事をする。

冬は寒いらしいが、慣れてくるとトイレに引きこもってバスが来るまでひたすらパズドラをしていたと先輩が言っていた。客の荷物をバスに投げ込むのも楽しいと。

仕事が夜間なので、生活リズムに悪影響を与えそうだ。

 

時代祭

これは大学特有の仕事である。上下白い下着を着て参加する。

装束を着て神輿を引くアルバイト。

途中で振る舞いのビールが飲めるのは素晴らしいが、白いパンツを持っていない場合はそれを買うのにお金を使うので、割がいいとは思えない。一日だけの仕事である。

 

色々話を聞いて、結局赤ジャンと、短期のアルバイトを掛け持ちですることにした。競輪場のバイトをやってみたかったが、ちょうど空きがなく、断念した。

 

ちなみに、この後在学中に知った一番変わったバイト(?)は社長である。

何をやっているのかは知らないが、彼は会うたびに違う柄のスーツを着ていた。