小説(タイトル未定) 第五話 キャンピング(前編 準備編)

その日、ボックスには二回生と新入生10人ほどが集まっていた。

 

主将の八雲先輩が前にでて話を始めた。

「さて、自転車と装備を買っていただいた方は既にサークル活動に必要な装備を8割がた買っていただいた訳ですが、あとひと踏ん張りです。来るGWに行われる行事、キャンピングに必要になる装備を購入していただきます」

どうやら僕の懐事情にとどめを刺しに来ているらしい。

 

「ただ、今日はサークルが推奨する装備を紹介するだけで、その場で購入していただくわけではないです。装備に余裕があればレンタルもできるかもしれません」

良心的だ。

 

一通り紹介を聞いたところ、必要な装備はこの通り:

 

 

①キャリア(荷台)

リアキャリアのみ(フロントキャリアは斡旋されない)

昔はフロントキャリアが主流だったようだが、サスペンションのついているMTBや、カーボンフォークにフロントキャリアは取り付けられないため、リアキャリアがメインとなっているそう。

斡旋されるリアキャリアはポピュラーなモデルらしく、必要十分そうだ。

 

②サイドバッグ

防水は必須。サークルではオルトリーブのサドルバッグが推奨されていた

 

③寝袋

斡旋されるのはIsukaの3シーズン用

 

④コッヘル

食器のこと

 

⑤銀マット

通称銀マ

 

一通り説明があった後、八坂が質問をした。

「バイクパッキングのようなスタイルの方はいるんですか?」と。

 

この一言で先輩方は侃侃諤諤話し合いを始め、その話し合いは20分以上に及んだ。保守派からは「どう考えても積載量不足」「必要な装備を全て搭載できないバイクパッキングは他人に迷惑をかけて自分だけ楽をしようとする邪道」「ていうか装備高過ぎねぇ?」という意見が上がり、その一方で、「必要な荷物さえ搭載できれば別によくね?」「テントとシュラフさえ軽量化すれば無理ではなくね?」「てかサイドバッグ重いよ」などという意見が上がった。

 

結論としては「男子夏合宿に参加する以上キャリアとサイドバッグは必須だが、女子は夏合宿に参加しないので、必ずしも必要ではない」というものだった。女子である八坂に対しては事実上の容認となった。そのあと、装備を注文する人は後でLINEを送るように、と連絡があり解散となった。そのあとは入江先輩、芦原先輩、八坂、八木と飯を食べに行った。

 

自転車を走らせて向かった先は今出川通りのラーメン屋で、少し中華料理店風のお店だった。なんと学生は替え玉が10円ということで、僕はこってりのラーメンと替え玉を注文した。

 

「でもさ~やっぱりバイクパッキングをやるやらないに関わらず、装備の軽量化はやっといたほうがいいと思うんだよ」と入江先輩。「金を掛けずに軽量化できるなら、それに越したことはないぜ」

「やっぱり一番はシュラフとエアマットだな。これだけでかなり違う」と芦原先輩。

「サークルの公式行事としては、5月から8月までしか野宿はやらないから、3シーズン用のシュラフを買う必要はない。夏用のコンパクトなシュラフか、ビビィ、インナーシュラフのどれかを選ぶべきだ」

 

「ビビィって何ですか?」と八坂

「SOLの寝袋型エマージェンシーシートだよ」と八木。彼はどうやらアウトドアには詳しいようだ。「SOL - Survive Outdoors Longerのビビィは防水の生地の裏側に体温を反射するアルミを貼り付けたもので、重量の割にあったかいシュラフカバーみたいなもんだよ」

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「まあ正直ビビィだけで5月は寒いかもしれんけどな。普通の化繊使った3シーズン用のシュラフが1㎏近いのに比べてビビィは200gを切る」と入江先輩。なんと恐ろしい装備なんだ…

 

「それかインナーシュラフを使ってみるのもいいかもな。防水性はないけど、十分に保温性はあると思うぜ。Sea to Summitのリアクターは素晴らしいぞ。洗濯機で洗えるしな」と芦原先輩。「洗濯機で洗えるのはいいですね」と八坂。「こっちは400gでちょっとで重いけどな」

 

 

 

「SOLのビビィもStSのサーモライトリアクター エクストリームも7,000円くらいで買える。普通のシュラフより少し安いくらいだ。山の上で登らない限りはこれで十分だし、何よりインナーシュラフシュラフに入れれば限界温度を引き上げられるし、ビビィはシュラフカバーになる。この応用性が素晴らしいんだよな」

入江先輩がきれいにまとめたところで、ラーメンが運ばれてきた。

 

こってりのラーメンは少ししつこい味付けだったが、美味しくいただいた。メンマがタケノコそのままの形をしていた。少しオシャレだ。

 

「あと軽くても嵩張るのが銀マだな。サイドバッグに入らないし」と芦原先輩。「エアマットは銀マより高いけど、クッション性は高いしコンパクトになるのがいい」

 

「エアマットは足の長さ分必要ないからな」と入江先輩。「腰までカバーできれば十分で、小さいサイズを買えば値段も安くて済むぞ。おすすめはモンベルのULアルパインマットか、Sea to SummitのULマットだ」

 

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「Sea to Summitのマットは収納時のサイズが恐ろしいぞ…」

やばいですねぇ…

 

「個人的にはSea to SummitのULマット+ビビィが一番おススメかな…テント使わずに野宿することもあるし、温度調節は着るものでするとして、軽量性と防水性を確保できる組み合わせだ」と芦原先輩。「まあ高地で寝るならウルトラライトダウンや、マイクロパフフーディがほしいところだけど」

 

「そこまでコンパクトになればバイクパッキングもできそうですね」と八坂

「まあね~テント持たずに着替えを極限まで削ればいけるかな~。まあバッグを買う前に装備の容量を見て、それからどっちにするか決めればいいよ」

 

 

ラーメンは先輩のおごりだった。