この記事では、クラフトビールとは何か?ということを簡単に説明し、手に入りやすいクラフトビールの銘柄と楽しみ方の紹介をしていきます。
クラフトビールブームとは何か?
クラフトビールブームとは何か?
私は下記の通り、いくつかの要素があると考えています。
③2008年頃~ 海外のIPAが日本へ
④ラガー以外のビール(エール)の普及
⑤2021年~ 大手ビールメーカーのクラフトビールがコンビニで取り扱い開始
①1994年 酒税法改正による地ビールの出現
1994年、ビールの最低製造数量基準が20,00,000ℓから60,000ℓへ引き下げられました。
それによって地方で地ビールと呼ばれる小規模なブルワリーによるビールが出現。
しかし、これらの地ビールブームは続かず、2000年頃にそのブームを終えます。
②2005年頃~ 地ビールからクラフトビールへの移行
上記、酒造法の改正により小規模なブルワリーが設立可能になりました。
1997年に設立した「ヤッホーブルーイング」はよなよなエールを主要製品に置くブルワリーです。
ヤッホーブルーイングの社長は海外で飲んだエールビールの味が忘れられず、日本での普及を狙って会社を設立したとのことです。
地ビールとの違いは、「海外で飲んだ美味いビールを日本で再現したい」というコンセプトに基づいていることだと思います。
ヤッホーブルーイングは地ビールブームの終焉で 2000年前後は赤字が続いたそうですが、2005年頃からネット通販を駆使し再度売り上げを伸ばしていきます。
参照:今年で20周年「よなよなエール」 | 株式会社ヤッホーブルーイング コーポレートサイト
いつからは正確にわからないのですが、よなよなエールはローソンでも取り扱いされており、日本で最も非常に入手しやすいクラフトビールだと言えます。
COEDOビールもクラフトビールを押し出し始めたのは2006年とのこと。
また、HUBのHUBエールの取り扱いが始まったのも2005年頃とのことです。
こちらもコンセプトは「アイルランドで飲んだ本格的なエールを日本でも提供したい」とのことです。
参照:HUB ALEとは:スポーツもお酒も楽しめるHUB|82
このように、海外で飲んだ本格的なビールを日本にも導入したいというクラフトマンシップが地ビールとクラフトビールの大きな違いであり、上記ブルワリーが普及し始めた2005年前後がそのスタートだと言えます。
③2008年頃~ 海外のIPAが日本へ
クラフトビールと言えばPUNK IPAを想像される方が多いのではないでしょうか。
PUNK IPAを製造しているのは2007年に設立されたBrewdogというスコットランドのブルワリーで、2人で設立された小規模なブルワリーでした。
大きな特徴は、IPAというイギリスの伝統的なビールに近代的なアレンジを加えたビールということです。IPAにはビールを日持ちされるためにホップが大量に加えられていましたが、そのホップによってビールの風味をフルーティーにしたビールになります。
日本に入ってきたのは2008年。流行に敏感な人が反応し、日本でも流行り始めます。
参照:春の嵐が六本木に巻き起こる!? ブリュードッグ六本木オープン | 日本ビアジャーナリスト協会
ちなみに、このスコットランドで流行り始めたクラフトビールはアメリカへも普及し、アメリカでは西海岸でIPAの一種であるWest Coast IPAやEast Coast IPAなどの細かいジャンルのIPAが出現します。2015年頃から流行っているNew England IPA(NE IPA、Hazy IPA)は、最近ようやく日本でも飲めるようになってきました。
④ラガー以外のビール(エール)の普及
このような流れから、伝統的な様々なビールのジャンルへの再注目が起こり、ラガー以外のビールが日本でも普及し始めます。
それがエール発酵のビールです。
エールを紹介するにあたり、先にラガー(ピルスナー)とは何か?を簡単に説明します。
これまで日本で一般的に飲まれていたビールはほとんど「ピルスナー」と呼ばれるものです。ラガー酵母で発酵されたビールの一種になります。軽くて飲みやすい味が特徴です。
サッポロのクラシックラガー、キリンのラガー
名前にラガーと入ってはいませんが、他の有名な大手ビールも「ピルスナー」という種類になります。
アサヒ、キリン、サッポロ、サントリーの主要ビールです。
これらには確かに味の違いはあるのですが、大きくは味の変わらない商品でした。
その差を意識して飲まれている方は少ないかと思います。
一方で、クラフトビールの中で主要なビールは「エール酵母で発酵されたもの」が多いです。クラフトビールと聞いて皆さんが何をイメージされるかは様々だと思いますが、有名なところで言うと下のビールなどではないでしょうか。
左から、ペールエール、IPA、Session IPAというジャンルになります。
全てエール酵母によって発酵されたビールになります。
ラガー酵母で作ったビールはスッキリした味になり、エール酵母で作ったビールは香りの豊かな味になります。
クラフトビールは味も重要ですが、香りが特徴的なものが多く、その特徴を出すためにエールが多く採用されているようです。エールの中にも様々なジャンルがあり、分類し始めるとキリがなくなるのですが、ジャンルごとにある程度味が似てきますので、ジャンルを把握しておくと自分の好みのビールに出会い易くなります。
基本的には下記で大体カバーできます。
・ラガー(ピルスナー)…日本の大手ビール
・ベルジャンホワイト…水曜日のねこ
・黒ビール(スタウト)…ギネスビール 他
⑤2021年~ 大手ビールメーカーのクラフトビールがコンビニで取り扱い開始
そして2021年3月、キリンビールがSpring Valley Brewery(SVB)名義でクラフトビール、496を発売します。
スーパー・コンビニで取り扱われるクラフトビール、というのが最も衝撃的な点で、一気にクラフトビールとの距離が縮まったイベントではないでしょうか。
ちなみに496はIPL(Indian Pale Lager)というジャンルで、ラガービールです。
予想ですが、大手ビールメーカーがこれほどの規模でビールを全国展開するにあたっては、従来のピルスナーを製造していた大規模な設備を使用するしかなく、ラガースタイルになったのではないかと考えています。
このビールはラガービールにホップの香りをつけており、ホップの香りが立っている点がクラフトビールらしく、一方でラガーらしい飲みやすさも兼ね備えています。
ラベルがダサいという点を除けば、非常に良い商品だと思います。
従来、小規模なブルワリーが作るビールがクラフトビールと定義されてきたように思いますが、今回大手ビールメーカーが展開した時点でこの定義は崩れかけています。
先ほど言及したように、クラフトビール(=クラフトマンシップのある新しいビール)という定義へ切り替えていく必要があるように思います。
大手ビールメーカーの流通網で一気に普及することで、今後さらに多くのクラフトビールが出てくるチャンスになることは非常にありがたいです。
入手しやすいクラフトビールの銘柄
さて、以上でクラフトビールとは何かを時系列で簡単に整理して説明させていただきました。「じゃあ、何を飲めばいいの?」という点について次で紹介します。
画像はAmazonのリンクになっていますので、そちらからご購入いただけますと私の生活の支えになります。具体的には晩酌が少しリッチになります。よろしくお願いします。
百貨店に行けば色々なクラフトビールが手に入るのですが、私が紹介するのはコスパ重視で比較的安価で味の良いものになります。
クラフトビールは保管状況によって味が大きく落ちることがあり、500円~1500円のクラフトビールを買ってもあまり美味しくないことがあります。特に海外のビールで顕著です。輸入時に高温にさらされて味が落ちたり、売れずに長期間保管されている間に味が落ちたりしている場合がほとんどです。
ですので、なるべく国産で、入手難易度が低く、味が安定していて、比較的安価で、外れてもダメージの少ない本格的なクラフトビールの紹介をさせていただきたいと思います。
ヤッホーブルーイング
・よなよなエール(272円)
ローソンに加えてセブンイレブンでも取り扱いの始まった、入手難易度が非常に低いクラフトビールです。
柑橘系のホップの香り、香ばしく、カラメルのような甘い後味があります。冷やすとカラメルのような甘みが薄れ、よりさわやかなホップの効いたビールを味わえます。
・僕ビールシリーズ(294円)
ローソンかよなよなの公式サイトでしか買えません。
数年ごとに新しいフレーバーへリニューアルされており、今だけしか楽しめないビールになります。セゾンスタイルのビールで、グレープフルーツのような爽やかな香りが楽しめる飲みやすいビールになります。
COEDO
・瑠璃(312円)
成城石井のような高級食品店で入手できます。
ピルスナーです。飲みやすいのに、非常に繊細で上質な味わいです。
たまに店頭でまとめ買いしているマダムを見かけます。しばしば売り切れてます。
・毬花(312円)
高級食品店、一部の酒屋で入手できます。
一つのホップが強調され過ぎておらず、バランスが取れていて飲みやすいです。
苦味が強くないのでIPA入門として強くおススメできます。
Brewdog
・PUNK IPA(420円前後)
酒屋、高級食品店、百貨店、ドン・キホーテなど、どこでも入手できます。
IPAです。非常にオレンジの強い香りがします。若干の苦みがありますが、爽やかです。一口含むだけで鼻から抜けていく香りに驚きます。
高いように思われますが、これほどレベルの高いIPAがこの値段で安定して味わえるのはとてもお買い得ですよ。
・Hazy Jane
ごく一部の酒屋、百貨店、高級食品店で入手できます。
New England IPA(NE IPA)です。タンパク質由来の濁りがあることから、Hazy IPA(濁ったIPA)とも呼ばれます。最近出てきた種類で流通量が少なく、まだ入手難易度が高めです。
パイナップルのような香りです。ジューシーな味で、少し甘みがあります。
Hazy IPAはまだ普及しておらず、当たり外れが大きい状況ですが、Hazy Janeは割と安定して美味しく、入門向けです。
伊勢角麦酒
基本的に通販でしか入手できません。たま~に百貨店で見かけます。
Hazy IPA(605円), ねこにひき(880円)
ここの Hazy IPAはひじょ~~~に美味しいです。
Hazy IPAは少し苦味がありますが、ねこにひきの方は全く苦味がなく、重厚なフルーティーさが楽しめます。
Amazonのリンクも貼ってますが、公式サイトからの購入の方が安くなるかと思います。https://www.biyagura.jp/c/all-items
SVB
・496
どこでも手に入ります。
飲みやすいラガーにホップの香りが加わり、飲みやすいビールに仕上がっています。
その他にもAmazonを見ていたらいくつか飲み比べの商品がありましたので、その中でもオススメできるもののリンクだけ貼っておきます。
最後に。
クラフトビールは贅沢な日に飲むようなもので、日々常飲するようなものではないと思います。常飲するのは黒ラベルとか、クラシックラガーで十分です。
上に挙げたクラフトビールは比較的安価なものですが、本格的なものは800円~2000円くらいの値段帯になります。ここまで来ると、ビールというより高いワインを飲んでいるという認識に切り替えた方が楽しめると思います。
最近はシングルモルトウイスキー、ナチュラルワインなど、こだわりの高いアルコールが流行ってきていますが、これらも非常に高価です。シングルモルトウイスキーは最低でも4000円~、ナチュラルワインも一本4000円~はします。それらと比べると、一本数百円のクラフトビールは敷居が低めだと言えます。
また、クラフトビールの特徴の一つに、ドリンカビリティが高いというのがあります。
これは、おつまみなしで、ビール単体で飲んでいても楽しめるというのが私なりの捉え方です。黒ラベルだけでガバガバ飲もうという気分に私はなれませんが、香りの豊かなビールであればそれ単体で飲んでいても楽しめます。
休みの日の夕方に、クラフトビールを一本飲むような楽しみ方がベストだと思います。
以上、皆様がそれぞれの豊かなビアライフを送れる手助けになりましたら幸いです。