シェア論-1

人はもっと多くの物をシェアすべきなのではないか。

僕がそう思ったきっかけは梅田のルクアにある蔦屋書店で本を読んでいた時だった、

ここの蔦屋書店は開店時間の遅い店の多い梅田で早朝から開いており、スターバックスが併設され、たくさんの椅子やソファが間接照明で優しく照らされる空間に並んでいる。ここでは書店に並んでいる本をカフェスペースに持ち込んで自由に読むことができるのだ。まだ新しく、やわらかい絨毯を踏む感覚が心地よい。

昨日、僕は福井県にある家から220㎞程自転車に乗り、大阪へ来ていた。それは充実した休日を過ごすためであり、その目的の半分ほどは早起きしててスターバックスの深煎りで苦みの強めなコーヒーで眠気を覚ましながら本を読むことにあった。バカらしい話だが、僕は家を出て遠く離れた大阪で室内に引きこもっていたのである。

僕が家の中で引きこもらない理由はよりリラックスできる空間で過ごしたいからである。これでも一応、家の中で快適に過ごせるようにソファを買ってみたり、プジョーのコーヒーミルを買ってみたり、家の証明を暖色に替えたりした。だがそれでもルクアの蔦屋書店には適わないのである。やはり、金のかかった空間は過ごしやすいのだ。

 

人口は減少傾向にあるが、戸建ての家は増加傾向にあるという。僕は家を建てることを悪手だと考えている。理由は3つある。一つは今後ドーナツ化現象が起きるにつれ、一部の都心部を除き地価は下がるだろうから。2つ目は転勤の際にすぐ手放すことができないから。3つ目は天災へのリスクだ。所有物を増やすと失うリスクが高くなる。車が欲しいと思っていた時期もあったが、いきなり転勤で東京へ行くことになるかもしれないし、保険は年に10万円、税金は年3万円かかるし、ガソリン代は高いし、僕は車を維持するためにはたらいているのではないのだ。なくても生活できるならば持たない方がいい。郊外に部屋を借り、会社へは電車か自転車で通勤し、休日に都心へ出かけて喫茶店でのんびりと過ごす生活が僕にとっての理想なのだ。

 

少子高齢化を防ぐ手段はシェアだと思う。というのも、人ひとりが暮らすためにかかる費用が高くなりすぎたのだ。子供を何人持つかと考えたとき一番に頭に浮かぶのは家のローンや古くなった車、子供の教育費、学費などだろう。核家族化が進んでしまってこれらの費用が当たり前のように受け入れられるようになっているが、親と暮らしていれば家はリフォームすれば建てずに済むし、車も必要な時に借りればいい、あとは子供が私立大学へ進学することだけを防げばいいだけである。高校の無償化なんて言っている場合ではない。それどころではないのだ。

 

何がシェアできるだろうか。

まず、家を持つ必要はない。僕なら代わりに、キャンプ用品をそろえるだろう。休日はそれをもって出かけ、木洩れ日の差す川辺でヘリノックスの椅子に座りながら本を読むのだ。浮いたお金で何ができるかを考えれば幸せな気分になれる。

どこに住むのか。家族と暮らしても家族と一緒に住むのが嫌ならば、ゲストハウスのようなシェアハウスに住めばいい。家具はなるべく共有してしまい、持ち物は最低限にする。一番こういった形の住み方を導入できそうだと個人的に思っているのが老人ホームだ。ホテルのような部屋で、お金を払えば安く料理を頼めるような。昼間はスポーツや読書、麻雀をして楽しく暮らす。引きこもって孤独死するよりはだいぶましな過ごし方だと思う。

 

家をシェアすれば家具を持たなくて良い。特に一時的に一人暮らしをするならば、いろいろ揃える手間とお金も、一人暮らしが終わってから家具を処分する手間もなくなる。電気ガス水道も一括にしてしまえば、高い基本料金を払わなくて済む。家全体にWiFiを飛ばせば、毎月5,000円近い大金を払わなくて済む。特に通信費なんてバカらしいと思うし、毎月携帯に8,000円+光回線に5,000円なんてどうして払わなければいけないんだ?僕はもう5年も、携帯を2台持ちして月2,000円で運用している。WiFiはスタバかコンビニで借りる。

共同のリビングには広い窓があり、その手前にはスタンドのような少し高めの机とシンプルな椅子が並んでいる。僕は隣のキッチンでコーヒーを淹れ、それを飲みながら書き物をしているところだ。後ろには畳のスペースがあり、オーディオ好き買ってきた

スピーカーから静かな音楽が流れている。右側には本棚が並んでいて、これまで暮らしていた人が好きに置いていった本がたくさん並んでいる。僕もたまにそこから漫画を持ち出して読む。

 

こうした生活を提案すると、家電が売れなくなる、消費が落ち込む、と考える人もいるかもしれない。だが、一人暮らしのその場しのぎの家具なんて、買ってもハイアールかリサイクルショップのリユース品である。国産のバカ高い電化製品が売れるわけがない。そんなことよりも、浮いたお金をもっと趣味や旅行に使った方が有意義だし、国内の消費も盛り上がるのではないだろうか?

ご飯の出る寮みたいなシェアハウスならば、料理の時間を他のことに使えるし、掃除するのが自分の部屋だけで済めばその時間も浮くし、安いシェアハウスならばその分外食すればいい。その方が余暇にお金を使う傾向になるのではないか。

 

そんなわけで、僕の理想の生活はシェアハウスに月3万円(光熱費・WiFi付)に住み、家具を買わず、趣味の自転車や服にお金を使い、週末はどこかへ出かけて喫茶店で本でも読むような暮らし方だ。別に全てを所有しなくてもいい。どこかにリラックスして過ごせる空間があればいい。こういう暮らしを試みる人が増えれば、街にはもっと過ごしやすい空間が増えて、僕も過ごしやすくなるだろう。